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有明の月 宵の雲(3)
有明の月 宵の雲
大木の下で涙を流しているりん。
その目の前にふわりと妖が降り立った。
無表情ながらも何がしかの強い想いを含んだ視線でりんを見つめる。
やがてりんが顔を上げ、静かに佇む妖と目を合わせた。
「殺生丸さま・・・。」
りんは涙を零しながらも嬉しそうに笑った。
妖は眉一つ動かさず、言葉一つ発さず、だがこの上なく優しくりんの涙を拭った。
黙したままの妖だが、無言の内にも理由を問い掛けているのが分かる。
りんは背筋を伸ばし、土の上に正座した。
「今日、村を発つ人にお別れを言ってきたんです。」
殺生丸の眉が僅かに顰められる。
どういう事かと金色(こんじき)の瞳が問い掛けている。
「その人に言われたんです。一緒について来てほしい、共に生きていこうって。」
「・・・・・・。」
妖は黙ったまま静かにりんの頬を撫でた。
それが心地良くて、目を閉じ首を傾けて妖の掌の感触を味わう。
「りんは十日間、一生懸命考えました。その人の事とか、その人と生きていく事とか、りんの事とか、それと--------殺生丸さまの事も。」
「・・・・・・。」
「きちんと自分と向き合って考えたんです。」
妖の手が離れた。
りんも目を開く。
妖の静かな視線が、りんの想いを一つも漏らさず掬い上げようとするように、しっかりとりんを捉えていた。
りんはその視線を真正面から受け止め、答えを告げた。
「りんは殺生丸さまと離れて生きていくことはできません。」
「・・・・・・。」
「絶対に。」
「・・・・・・。」
誰と別れても、何を失っても、それだけはできない。
(だって、りんは----------。)
その時、初めて妖の表情が動いた。
口角を僅かに上げ、
「当たり前だ。」
と嗤った。
「お前の命を拾ったのはこの殺生丸だ。」
妖はその事実を改めて思い知らせようとするかのようにりんの頬を指の背でなぞり、
そのまま両手で包んだ。
「殺生丸さま・・・。」
「お前は私のものだ。」
「はい。」
「そしてそれをお前自身も望んだという事だ。」
「はい。」
「ならば、もう逃れられると思うな。」
「はい。」
不意に妖に唇を重ねられ、りんは一瞬体を強張らせた。
しかしすぐに力を抜き、されるがまま、妖に身を委ねた。
一緒には行けない。
りんの答えを聞いた時、青年はゆっくり頷いた。いつものように優しく穏やかな顔で。
「沢山考えてくれたんだね。」
「うん。」
「なら俺が言うことは何もないよ。」
青年はりんの手を握って言った。
「考えてくれてありがとう。」
りんは微笑んで首を振った。
「考えさせてくれてありがとう。」
妖と人。男と女。共に生きていくということ、誰かを愛するということ。
そんな大事なことをりんは少しも分かっていなかった。否、自覚していなかった。
あまりに幼かったと反省するばかりだ。
自分の中に眠っていた様々な感情と願望に、りんは正面から向かい合った。
そして嘘偽りない自分の心の声に辿り着いたのだ。
自分自身の結論を導き出した時、
りんは寂寥感よりもむしろ喜びを感じた。
一点の後悔も抱かない人はいない。
選ばなかったものを振り返る時だってある。
それでも自分が選んだ答えなら、そこにこそ幸せと喜びがある。
かごめの言葉が胸の深奥に染み渡った。
「一つ訊いていいかな。」
遠くを見つめつつ青年が呟いた。
りんは青年の横顔を見上げた。
「りんは・・・あの妖と生きていくの?」
「分からないけど、りんはそうしたいと思ってる。」
「分からない?」
青年が訝しむように視線を戻した。りんは笑った。
「りんは殺生丸さまのお側にずっといたいけど、殺生丸さまがどう思ってるかは分からないから・・・。」
「それでもそいつを選ぶ?」
「うん。」
一片の曇りなく答えるりん。
「・・・そうか、そうだな。」
青年も頷き、目線を再び遠方へと向けた。
「もう一つだけ訊いてもいいかい。」
「ん?」
「りんは、そいつのことを-----------。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
沈黙が流れる。
小鳥のさえずりが歌うように響き、
風に乗って村の和やかな喧騒が微かに聞こえてくる。
やがて青年は笑顔で首を振った。
「いや、やっぱりいいや。訊かないでおくよ。」
「・・・うん・・・。」
「じゃあ俺は行くよ。出発予定日を早めたし、準備も色々あって忙しくなるから、りんと会うのもきっとこれが最後だ。」
「そっか・・・。」
「さよなら、りん。」
「さようなら。」
青年は背を向け歩き出した。りんはじっとその背中を見送る。
大好きな背中。
あの背中におぶってもらったこともあった。悪ふざけで突き飛ばしたこともあった。
何度励まされただろう。何度笑い合っただろう。
多くの時間を共有した大切な人。
その時、不意に青年が振り向いた。
「俺、立派な職人になるから!りんも絶対幸せになれよ!」
それだけ叫んで青年は駆け出していく。
小さくなっていく背中に向かってりんも叫び返した。
「絶対だよー!約束だよー!・・・・・・ありがとー!」
青年はもう振り返らなかった。
ただ前へ向かって走っていく背中に迷いはない。
青年の姿が完全に見えなくなってからりんも駆け出した。
いつも妖と時を過ごす大木の下まで走り、しゃがみ込んだ。
涙が溢れた。
“りん、泣きたかったら我慢しないで思いっ切り泣け。その後でまた笑えばいいよ。”
いつでもりんを慰めてくれた青年の言葉が蘇る。
溢れるままに涙を流し、心のままに泣いた。
(ありがとう・・・ありがとう。)
その言葉だけを心の中で唱えながら。
惜しむようにゆっくりと唇を離した妖は、強くりんを抱き締めた。
りんは目を細めて妖の抱擁を受けた。
自分の気持ちに辿り着けたこと、その気持ちに迷いがないこと、そして妖が応えてくれたことの全てが嬉しい。
りんの顔は知らず知らずのうちに微笑みを浮かべていた。
自分の気持ちに辿り着けたこと、その気持ちに迷いがないこと、そして妖が応えてくれたことの全てが嬉しい。
りんの顔は知らず知らずのうちに微笑みを浮かべていた。
「殺生丸さま。」
「何だ。」
「りんは幸せです。-----------とっても。」
「・・・・・・。」
りんをきつく抱いたまま、妖は顔を傾ける。
想いの込められた金色の瞳を夢心地で見つめていたりんは、再び唇が重なる直前にそっと瞳を伏せた。
りんちゃん選択の時。
誰とどれだけ親しくなっても無邪気に殺生丸さま一筋♪なりんちゃんも
大大大好物なのですが(*´д`*)
恋心とまでいかなくとも、人間の青年に微かに心惹かれることがあってもおかしくないと思うんです。
でも殺生丸の存在があまりにもりんの中で絶対的だから
ある意味選択の余地はないと。
つまり殺りん最高!\(^O^)/ということになりますねwww
楽しく書けましたv
読んで下さった方、ありがとうございます!
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最近このサイトを見つけて陰ながら読ませていただいてます^^
すごくはまってしまいました笑
頑張ってください~
このような辺境ブログを見つけて下さり、ありがとうございます。
はまっただなんで…もったいないお言葉です(´;ω;`)ブワッ
またお時間ある時に覗いてやって下さい。
嬉しいコメントありがとうございました!