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幸せの形・後編
7000HITのキリリクの後編です。
前編を読んでいない方は前編からお読み下さい。
よろしければつづきから是非(^^)
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幸せの形(後編)
それから授業は順調に進んでいった。
俺も積極的に発言し、拍手喝采を浴びてちょっと得意な気分にもなった。
誰も答えられなかった難問に正解してみせた時、ティファは驚いたように、それからすごく嬉しそうに俺に向かって拍手してくれた。
照れくさいような、くすぐったいような気持ちで着席すると、左隣の奴が俺のわき腹をつついてきた。
「どうしたんだよ、デンゼル。やる気になっちゃって。」
「へへ、まぁな。」
「やっぱ母ちゃんが来てくれたからだろ?」
「うん。ダサいとこ見せらんないじゃん。」
「調子いい奴。」
そう言って笑い合う。すると、低く呟く声が聞こえた。
「何が“母ちゃん”だよ。」
「?」
声のした方を見ると、グリスが横顔に薄ら笑いを浮かべていた。
「お前、本当の母さんはもういないんだろ。」
「・・・そういう言い方はないだろ。」
「だって事実じゃん。お前がよく自慢してくる“クラウド”も、妹だって主張してる“マリン”も、あそこにいる“ティファ”も、血の繋がりなんかないくせに。」
ああ、血の繋がりはない。
それが何か悪いことなのか?
「所詮、血を分けた本物の家族には敵わないんだよ。」
でも、俺たちは家族だ。そこに「血の繋がり」が必要なのか?
グリスはゆっくり俺と視線を合わせてきた。
そして、冷えた瞳と吐き捨てるような口調で、こう言った。
「お前んちの家族なんて、赤の他人の寄せ集めじゃん。」
ガターン!
次の瞬間、教室中に派手な音を響かせて、グリスは机もろとも床に倒れ込んでいた。
数秒の静寂の後、不意に上がる悲鳴。
先生が慌ててグリスに駆け寄るのを眺めながら、自分の拳がじんじんと痛むことに気付いた。
俺が・・・殴ったんだ。
夢の中のように現実感がないまま、ゆっくり首を巡らせる。
凍りついた表情で目を見開いているティファと目が合った。
「デンゼル君、何するの!?」
先生がグリスを起き上がらせながら俺を睨み付ける。
そりゃそうだ。授業参観の授業中にこんな騒動を起こされたら、教師の立場がない。
ティファが急いで走り寄ってきた。
まずグリスの無事を確認し、何度も「ごめんね」と謝っている。
ティファの屈みこんだ背中がやけに哀しく見えた。
「デンゼル君、後で職員室に来なさい!」
先生が俺に怒鳴る。
するとティファが俺の肩を優しく抱いた。
「デンゼル、まずはちゃんと謝って?」
こんな瞬間にも、俺を守るようにしっかりと抱いてくれる優しい手が温かくて、目が潤みそうになる。
ごめん・・・・・・ティファ、ごめん。
せっかく授業参観に来てくれたのに・・・こんなところを見せちゃって。
ティファに恥をかかせてしまってごめん。
「ね?デンゼル。」
俺の目を覗き込むティファの瞳から、大丈夫、という気持ちが伝わってくる。
(大丈夫よ、何か理由があるんだって事はわかってる。でも、まずはきちんと謝って。)
力強いティファの瞳に促されて、謝ろうと口を開いた。
でも、漏れたのは謝罪の言葉じゃなかった。
「ティファ、俺たちは家族だろ?」
たとえ血が繋がっていなくても。赤の他人だとしても。
「本物の家族だよな?」
ティファの見開かれた瞳に映る俺は、みっともない程切実な顔をしていた。
ティファが何もかもを悟ったように、悲しげに俺の髪を撫でた。
数十分後。
俺とティファは生活指導室で担任が来るのを待っている。
今頃クラスでは帰りのホームルーム中だ。それが終わったら担任にこってりと油を絞られるんだろう。
あれからすぐに終業の鐘が鳴り、グリスは念の為保健室へと連れて行かれた。
ティファが奴に付き添ったが、どうやら頭にこぶを作っただけで済んだらしい。
ティファが奴に付き添ったが、どうやら頭にこぶを作っただけで済んだらしい。
俺は生活指導室へ呼び出しを喰らい、後からやってきたティファと共にこうして叱られるのを待っている。
ティファはここに来てから一言も話さない。
それが妙に不安で、居心地が悪かった。
もしかしたらティファは俺に呆れているのかもしれないと思うと胸がざわついた。
「あの・・・ティファ。」
恐る恐る見上げると、視線がかち合った。
「ごめん・・・俺、こんな・・・・・・。せっかくティファが来てくれたのに・・・。」
上手く言葉が出てこなくて俯く。
するとティファの静かな声が響いた。
「・・・あの子、デンゼルが殴った子のご両親、とても多忙なんだって。」
「?・・・そうなんだ。」
「普段から顔を合わせる時間も少なくて、運動会や学芸会なんかもめったに来られないそうなの。今日の授業参観ももちろんいらしていないし。」
「そうなの?知らなかった・・・。あいつ家の自慢しかしないから。」
「きっと普段から強がってたのね。」
ティファが少し微笑む。
俺ははっとして顔を上げた。
両親から欲しい物を望むままに与えられ、いかに甘やかされているかを長々と話していたのは、不安の裏返しだったのか。
自慢話は両親の愛情を自分で確認する作業だったのか。
強がって、寂しがるまいとして、必死に虚勢を張っていたあいつの目に、自分の姿がどう映っていたのか、たった今気付いた。
だって俺もティファが来てくれるまでそうだった。
何度振り返っても誰もいない。
あんなにたくさん保護者がいるのに、自分の親だけが、いない。
(ここで俺が正答しても、喜んでくれる人はいないんだ。)
そんなことを思った自分を思い出す。
「あの子がデンゼルに何て言ったか、聞いたわ。」
ティファが言葉を続ける。
「血の繋がっていない家族のことを嬉しそうに話すデンゼルを見て、血の繋がった両親にちゃんと自分が愛されているのか不安になって、どうしようもなく羨ましくなったんだって。」
「・・・俺は、あいつを傷つけた・・・。」
「でもデンゼルも傷つけられた。そうでしょ?」
ティファがさっきのような悲しげな表情で俺の手を取った。
「デンゼル、あなた達は―――子ども達は、形はどうあれ、温かい愛情の中で幸せに育つ権利があるの。ううん、そうじゃなくちゃいけない。その温もりを奪う権利なんて誰にも・・・神様にだってないわ。」
ティファが遠くを見るような眼差しで宙を見据えた。
何かを決意しているような、強い瞳。
「私は・・・デンゼルが幸せだと思える環境を守りたいと思ってる。私だけじゃない、クラウドだってそうよ。それがどういう形のものであれ・・・二度と無残に奪われることのないように。」
俺の・・・幸せの形?
そんなもの決まってる。
「ティファ。」
「ん?」
「俺たち、本物の家族だろ?」
「・・・そうだね・・・。」
ティファが柔らかい微笑に涙を浮かべた。
その涙を見て、ふと、ティファはどれだけ辛い思いを経てここまで辿り着いたんだろう、と思った。
子ども達は幸せに生きる権利があると言うティファは、どんな子ども時代を過ごしてきたの?何を失い、どんな痛みに耐えてきたの?
ティファの涙の意味はまだわからないけれど。
ティファが俺の幸せを願ってくれているのと同じくらい、俺だってティファに幸せになってほしいと願うよ。
そして――――グリスも。
「ティファ、俺、ちゃんとあいつに謝るよ。」
「・・・うん。」
「喧嘩両成敗って言うんだろ?こういうの。」
「難しい言葉知ってるじゃない。」
「俺の秀才っぷりは今日の授業参観でわかったでしょ?」
「ふふ、クラウドに話したら驚くね。きっと次はクラウドも来たがるわよ。」
「そ、そうかな。」
さすがに照れくさいからやだよ、と言いかけたけど、ちょっと想像してみた。
腕組みして微笑み、頑張れよ、と視線で語るクラウド。
その隣で手を振り、ちゃんと前向いて、と口パクして苦笑するティファ。
うん、悪くない。
ティファとクラウドが並んで立ったら、今日のざわめきどころじゃないだろうな。
女子も男子も教室の後ろに釘付けになるに違いない。
その様子を俺とマリンは鼻を高くして眺めるんだ。
俺達の、自慢の両親を。
まず・・・お待たせしてすみませんでした!(土下座)
そして「セブンスヘヴンの定休日に学校からお呼び出し」という設定を踏まえていなくてすみません!(更に土下座)
でも一度は書いてみたかったデンゼル×ティファをリクエストとして書かせて頂けて、とても嬉しかったです(*´▽`*)
デンゼルは「頭が良くて、ちょっとませてて、不器用な面がある」というイメージです。背伸びしたいお年頃なんですよね♪←殴
そのデンゼルの語りとして書いたので、結構文章が淡々としてるかもしれません。
ラストでクラウドとティファのことを「両親」と言わせるかどうか迷いました・・・。が、デンゼルの両親は亡くなった両親しかいないという気持ちはあるけど、「デンゼルとマリン」の両親はクラティ以外おらんだろう、ということで敢えて「両親」と言わせてみました。
リクエストを頂いた時は「こ、これは萌える!」とノリノリだったのですが、
想像以上に深いテーマでしみじみ考えさせられました。
またストライフ一家の物語に挑戦してみたいです。
yunaさん、素敵なリクエストを本当にありがとうございました!こんな話でよろしければyunaさんに捧げますv
そして、読んで下さった方ありがとうございます。 目次(FF7SS)へ戻る
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