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Nightmare Carnival
シリアスなんだかふざけてるんだか分からないタイトルですが、
ふざけてます真剣です。
ストライフ一家を襲った悲劇のお話。
よろしければつづきから是非~^^
Nightmare Carnival
暗闇。
誰もいない。何も聞こえない。
・・・俺は何故こんな所にいる?
ああ、そうか、そうだった。
デンゼルはWROの寮に入って家を出て行った。
マリンもバレットと二人の暮らしに戻ったから、もういない。
だからここにはもう俺とティファの二人しかいない。
ふと隣に目を向けると、先程まで誰もいなかった空間にティファが立っていた。
何の感情も浮かんでいない横顔をこちらに向け、
唇を動かさずに意思を伝えてくる。
----------ごめんね、クラウド。私ももう行かなくちゃ。
行く・・・?
---------遠くへ行かなきゃいけないの。ここにはもう、戻ってこない。
どうし・・・て?俺はティファまでも失わなきゃならないのか・・・?
---------大丈夫。クラウドなら独りでもきっとやっていけるよ。
ティファの姿がどんどん霞んでゆく。
焦ったクラウドは駆け寄って手を伸ばしたが、その手は虚しく空を掴むだけだった。
(ティファ!)
この時を逃したら永遠にティファは去ってしまう。
それは痛いほど分かっているのに為す術がない。
(ティファ!)
クラウドは必死でティファの名を呼んだ。
(ティファだけは失うわけにはいかない・・・!)
暗闇が「何を身勝手なことを」と嘲る。
クラウドは歯軋りする思いで叫び続けた。
(頼む、ティファだけは!ティファだけは・・・連れて行かないでくれ!)
彼女がいなければ俺は生きていくことができない。独りで生きていけるほど俺は強い人間じゃない。それはティファもよくわかってくれているだろう?
-----------ごめんね、クラウド・・・。
「クラウド!」
体の芯から揺すぶられる感覚。
クラウドは文字通り飛び起きた。
頭が鉛のように重い。
少しずつ定まってきた焦点で、自室のベッドで寝ていたことを確認した。
(夢・・・?)
額の汗を拭い、まだ嫌な音を立てている心臓を押さえると、
心配そうなティファの顔が覗きこんできた。
「大丈夫・・・?随分うなされていたけど。」
「ああ・・・ありがとう、ティファ。」
恐ろしい夢だった。
だが、あくまでただの夢だ。
その証拠にティファはここにいる。子ども達だって今頃部屋ですやすや寝ているだろう。
大丈夫だ、ティファはここに・・・俺の側にいてくれる。
そこまで思考を巡らせ、ふと疑問が浮かんだ。
「ティファはどうしたんだ?」
今日はそれぞれの自室で就寝したはずだった。
ティファにちょっかいを出した店の客を放り出したクラウドへの罰なのだがまぁそれはいいとして。
とにかく、今夜は別々に寝ていたはずだった。
クラウドに問いかけられて恥ずかしそうに俯くティファ。
頬をうっすらと染め上げ、下を向いたまま何事か言いにくそうにためらっている。
その仕草が愛しくて思わず抱き寄せた。
「もしかして・・・そういう気分になったのか?」
すかさず鳩尾に拳が入る。
「っ!!!!!」
「へ、変なこと言わないで!ただ・・・その・・・怖い夢を見ちゃったから・・・。」
「・・・こ、怖い夢・・・?」
涙目になりながらも視線を向けると、
ティファはこくりと頷いた。
「すごく嫌な夢・・・。それで怖くなってクラウドの部屋に来たら、クラウドもうなされてたからびっくりしちゃった。」
「そうか・・・。」
「クラウドもやっぱり怖い夢見てたの・・・?」
「ああ、怖かったな。」
何もない暗闇の中でティファを失う夢。
これ以上の悪夢があるだろうか。
「でも、ティファが起こしてくれたから助かった。」
そう言って再び抱き締めると、ティファもおとなしくクラウドの肩に頭を乗せた。
「クラウド。」
「ん?」
「やっぱり、今夜ここで・・・クラウドと一緒に寝てもいいかな。」
「ティファ・・・。」
「クラウドが隣にいてくれれば怖い夢なんか見ないから・・・。」
安心しきったティファの声に、クラウドの胸も温かくなる。
俺の台詞でもあるな、と思いながらティファに唇を近付けると、ティファは恥じらいつつもそっと目を伏せた。
その時・・・。
「クラウド!」
勢いよく部屋の扉が開いてデンゼルが飛び込んできた。
その瞬間、ティファの華麗な掌底によりクラウドは見事に突き飛ばされた。
「あれ、ティファもいたんだ。てかなんでクラウドはシーツにめり込んでるの?」
「ちょ、ちょっとね・・・。それよりどうしたの、デンゼル?」
「今すっごい嫌な夢見ちゃってさ・・・。」
「嫌な夢?」
「うん・・・。」
普段は強がるデンゼルが珍しく気弱そうにベッドに腰掛ける。
ティファはデンゼルの肩を抱いた。
「どんな夢だったの?」
「それがさ、ユフィが出てきたんだけど・・・。」
「ユフィ?」
「うん。ユフィが人体実験に目覚めて、周りの人間を片っ端から改造していくんだよ。」
「え。」
「クラウドもティファも捕まって変なメカにされちゃって、目からビームとか出すしさ。」
「ビーム・・・。」
「俺も同じようにメカにされて、そしたら今度はバレットが『お前のようなメカ男にマリンはやらねぇ!』とか訳の分からないこと言いながら追いかけてきて・・・参ったよ。」
「それは何て言うか・・・・・・怖いわね。」
「だろ?あーまだ心臓バクバクいってるもん。」
ビームを乱射しているクラウドとティファを背景に、
メカになったデンゼルがバレットに追い回される図が浮かんだ。
(メカにされたら・・・困るわね。味覚がないからお料理の味付けが分からなくなっちゃうし、一度転んだら自力で起き上がれるのかしら?目からビームを出すクラウドは・・・ちょっと嫌かも。)
ティファが考え込んでいると、クラウドがデンゼルの頭をくしゃりと撫でた。
「ユフィに人体改造する技術も頭もないから安心しろ、デンゼル。」
「クラウド、つっこむ処そこじゃない。」
「ティファに言われたくないぞ。」
「どうして!?」
頭上で言い争い始めたクラウドとティファを交互に眺めていたデンゼルは、
廊下を駆けてくる軽い足音に気が付いた。
案の定、マリンがぬいぐるみを抱えて飛び込んできた。
「ティファ!」
「マリン、どうしたの?」
「怖い夢見た!」
ティファがデンゼルを抱いていた為、マリンはクラウドに飛びついた。
「起きたらデンゼルもいなくなってるんだもん・・・。」
「ご、ごめんごめん!」
泣き声を出すマリンに慌ててデンゼルが謝る。
クラウドはマリンの頭を撫でた。
「マリンも怖い夢見たのか。」
「うん・・・。あのね、広くて暗いお屋敷の中に、一人ぼっちなの。」
「そうか・・・。」
「地下室から変な呻き声が聞こえてきて・・・降りていったら・・・。」
デンゼルとティファはぎょっとして息を止めた。
「お、降りていったら・・・?」
「棺桶がいっぱい並んでて、その一つから呻き声が聞こえてきて・・・。」
「棺桶?」
「そしたらいきなり棺桶の蓋がバターンって開いて、そこから赤いマント着て長~い髪を振り乱したドラキュラが出てきて・・・。」
「赤いマントに長い髪・・・。」
「その人がお化けみたいな暗い声で『電話屋はどこだ』って呟いたの。怖かったよ~!」
「・・・・・・。」
「・・・マリン、そのドラキュラの顔は見たか?」
「ううん、見てない・・・。だって怖かったんだもん・・・。」
「そうか。そのドラキュラには後で俺からよく言い聞かせておく。」
「ほんと?クラウド、そのドラキュラさん知ってるの?」
「ああ。『勝手にマリンの夢に出てくるな。出てくるなら明るく楽しい夢にしろ』って伝えておくからな。」
「うん・・・。」
クラウドに宥められ、ようやく笑顔を見せるマリン。
ティファは密かにその“ドラキュラ”に同情した。
「しかし、全員が同じ日に悪夢を見るとはな・・・。」
「クラウドとティファも?」
「ああ。」
「すごいシンクロ率だね、俺たち!」
すっかり立ち直ったデンゼルが面白そうに言った。
「まさに家族って感じ。」
「確かにな。」
クラウドに頭を軽く叩かれ、デンゼルは嬉しそうに笑った。
マリンはティファの腕にしがみ付く。
「ねぇティファ、今日一緒に寝てもいい?」
「もちろん。四人で寝ようね。」
「うん!」
嬉々としてティファの隣に潜り込むマリン。
デンゼルとマリンを間に挟んで、クラウドとティファは目を合わせた。
そして二人でこっそり微笑み合う。
独りで見る悪夢は恐ろしい。
だが、ここに集った家族が同じ夜に悪夢を見たのをシンクロだと言うなら・・・それすら家族の絆の証のようで嬉しく思えてしまう。
「おやすみー。」
「おやすみなさーい。」
「おやすみなさい。」
「おやすみ。」
今度こそ幸せな夢を。
寝静まった四人の穏やかな寝顔を、月明かりが優しく照らしていた。
<おまけ>
翌日。
「お前の思いつきは自分の胸一つに収めておくように。
ろくな事にならない。クラ」
「マントを脱いで髪を切って明るく生きてくれ。
あの棺桶早く処分しろよ。クラ」
上記のメールをそれぞれ受け取ったユフィとヴィンセントは
首を捻ることしきりだったと言う。
ストライフ一家は全員どこか抜けてるといいな、という願望。
ほのぼの家族図が好きなんです(*´▽`*)
読んで下さった方、ありがとうございます。 目次(FF7SS)へ戻る
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