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月深き森
殺りん迷子話。

旅の途中のお話。

この話を書きながら、
「兄上はツンデレと見せかけたデレデレかもしれない(゜Д゜)」ということに気付きましたww
そんな話です。(どんなだ

よろしければつづきから是非~^^




























「あれ?」
 
我に返ったりんは辺りを見回した。
 
「・・・ここ、どこ?」
 
 





 
月深き森







 
 
りんは時折迷子になる。
 
邪見が平生から口を酸っぱくして「一人でうろつくな。阿吽から離れるな」と言い聞かせているし、
りんも十分気を付けているつもりではあるが、元来好奇心が旺盛な少女だ。森や平原で目にする様々な現象に心奪われ、ついつい道深くまで入り込んでしまうことがある。
 
もちろん最初からそうだったわけではない。
 
 
一月目は迷子になるなどとんでもないことだった。
妖達に遅れぬよう、置いていかれぬよう、
必死についていくことだけを考えていた。
妖がりんを残して一人出掛けてゆく時も、りんは決してその場所を移動することなどなかった。
たとえ自分の行方が知れなくなっても妖達が探してくれる確証はない。
むしろ置いてゆかれるだろうと思ったし、それで当然だと思っていた。

 
二月目からより居心地の良い場所を求めることを覚えた。
妖が必ず迎えにきてくれることに少しだけ確証が持て、
留守の間に食料を探し、水場を探し、退屈しのぎの場所を求める知恵と余裕ができた。
居心地の良い場所に腰を落ち着けると、
妖が戻ってくるまでおとなしく待っていた。

 
妖と旅をするようになって三月目。
りんは初めて迷子になった。

 
取り戻した声で歌を口ずさみながらのんびり妖の帰りを待っていると、
目の前に野兎が飛び出してきた。
今まで見た事がないほど真っ白な、綺麗な兎だった。
りんは思わず歓声を上げた。
 
「うわぁ、可愛い!うさぎさん、こんにちは。」
 
兎はりんに視線を向けた。
真ん丸とした真っ赤な瞳が愛らしく、りんはにこにこしてしゃがみ込んだ。
 
「どこから来たの?どこへ行くの?今日は卯の日なんだって。卯ってうさぎさんのことなんだよ。」
 
澄んだ瞳でりんを見上げていた兎は、
あっと言う間に身を翻して茂みに飛び込んだ。
 
「あっ・・・!」
 
りんは慌てて後を追おうと足を踏み出し、
思い止まって背後を振り向いた。
 
阿吽にもたれて気持ち良さそうに鼾をかいている邪見に、「ちょっとだけ遊んでくるね」と言い残し、りんは兎を追って走り出した。
 
追いかけた理由は特にない。
強いて言えば、その兎があまりに綺麗だったのと、
子ども特有の向こう見ずな好奇心故の行動だった。
 
 
その日の森は美しかった。

 
雨上がりの草木と腐葉土の匂いに満ち、
木々の間から漏れる木漏れ日は優しくりんを包んだ。
兎はすぐに見失ってしまったが、森の光景はりんを微笑ませ、奥へ誘い込むのに十分な魅力に溢れていた。
 
鳥の巣を発見したり、獣達の戯れる様子を眺めたり、
熟した木の実を拾い集めたりしながら、りんは夢中になって遊んでいた。

 
それからどれほど経った頃か、
ふと日が暮れかかっていることに気が付いた。
 
周囲にいた獣達は全てねぐらへ帰っていく。
いつの間にか自分の影が長く伸びている。
りんは慌てた。
 
「いけない!早く戻らないと邪見さまに叱られちゃう。」
 
急いで道を引き返したが、元々きちんと道を辿ってきたわけではない。
りん自身の足跡を手掛かりに何とか帰路を辿ろうと試みたが、秋の夕日は残酷な速度で地平線の彼方へと沈んでゆく。いくらも引き返さないうちに、森は闇に包まれた。
 
りんは途方に暮れて辺りを見回した。
 
立ち並ぶ木々が腕を広げて影を作り出している。
黒い影となった木はりんをじっと見下ろしている。
 
(ど、どうしよう・・・・・・。わっ!)
 
ヒュッ!と斬れそうな音を立てて風が冷たく吹き付けてきた。
反射的に足を踏ん張って耐えねばならないほどの風圧だった。
 
先程まで暖かかったはずなのに。
風までもが夜の顔になっている。
風に揺れる木々が、ざわざわと脅しつけるような音を立てる。
 
不意に耳元で「ギャーッ!」と鳥の悲鳴が上がった。
昼間の小鳥のさえずりとは似ても似つかない、しゃがれた威嚇の悲鳴だった。
 
りんは弾かれたように走り出した。
 
「阿吽ー!邪見さまー!」
 
闇雲に走りながら叫ぶ。
小枝や石ころで手足が傷つくのも構わず、りんは逃げた。
 
形相を変えた夜の森が追いかけてくる。
 
錯覚とわかってはいても、
逃げ出さずにはいられないほど恐ろしかった。
 
 
「せ、殺生丸さまぁーー!」

 
悲痛な叫び声で妖を呼んだと同時に、りんはぎくりと足を止めた。
 
微かに狼の遠吠えが聞こえた。
或いはこれも錯覚なのかもしれないが、あの物悲しい響きを耳にした気がしたのだ。
 
りんは息を詰めて気配を窺った。
落ち着け、落ち着かなきゃと自分に言い聞かせる。
 
その時、別の場所から、今度ははっきりと狼の遠吠えが聞こえた。
仲間の呼び声に応えたのだろう。先程よりも近い。
 
りんの足が震え出した。
歯の根が合わず、カチカチと音を立てる。
ぐらりと世界が回り、脇の大木に手をついて体を支えた。
 

 
どうしよう、どうしよう、どうしよう。

 
 
狼がいる。恐らく集団で。
 
距離はあったからりんに気付いてはいないだろう。
しかしりんの脳裏には、狼に襲われた記憶が鮮やかに蘇っていた。
恐怖の記憶の果てに覚えている映像は、飛び掛ってきた狼の鋭い牙と爪が迫ってくる絶望だけだ。
 
「・・・せ・・・・・・。」
 
妖を呼んだつもりの声がぷつりと途切れた。
下手に声を上げたら狼に気付かれてしまうかもしれないと思うと、助けを求めることさえ恐ろしくてできない。
 
今すぐにでも走って逃げ出したいが、震えるばかりの体は思うように力が入らない。
 
干上がった喉をごくりを鳴らし、
少しずつ体の向きを変え、足を踏み出した。
その瞬間、再び狼の遠吠えが聞こえた。
 
りんは目を瞑り耳を塞ぎ、鉄砲玉のように駆け出した。
 
理性も感情もない。
胸を焼かれるような恐怖に突き動かされ、ただひたすら駆けた。

すると、飛び出た木の根に足を引っ掛け、思い切り転んだ。・・・・・・いや、転びかけた。
 
つんのめったその瞬間、りんの肩は力強い腕に支えられ、地に打ち付けるはずだった頬は柔らかい毛皮に押し当てられた。
 
「・・・?」
 
そろそろと顔を上げると、こちらを見下ろす綺麗な金の瞳と目が合った。
 
りんを支えた殺生丸は
珍しく呆れたような感情を滲ませた声で問いかけた。

 
「何をしている。」

 
りんは目を見開いた。
 
「殺生丸さま・・・?」
 
ぽかんと口を開けて妖を見上げる。

 
殺生丸さま?ほんとに?本物?夢じゃない?ここにいる?

 
意味もわからず口走りながら、りんの頬に涙が伝う。
 
張り詰めていた糸が切れたせいか、自分でも戸惑うほど涙が溢れてくる。
無意識のうちに嗚咽しながら、
りんは妖の毛皮に顔を押し当てて泣きじゃくった。
 
 
対する妖は、戸惑いを覚えつつ少女を見下ろしていた。
 
先刻自分の帰りを出迎えたのは、いつものように明るいりんの笑顔ではなく、
りんを見失って真っ青になってうろたえている邪見の姿だった。
申し訳ございません殺生丸さまりんの奴ときたら少々目を離した隙にいつの間にやら何処かへ・・・と捲くし立てる老僕を無言で蹴り飛ばし、
殺生丸はりんの匂いを追った。
 
少女の匂いは道々で分散されている。
遊びに夢中になるあまり、あちらこちらへとふらふら彷徨っていたのだろう。
 
しかし犬の化生である殺生丸にとって
りんの正確な位置を推し量ることなど、たとえ匂いが多少分散されていようとも、至極容易い。
 
余裕ある足取りで歩を進めた刹那、
鋭い嗅覚はもう一つの気配を感じ取った。

 
(・・・狼共か。)
 
 
程なくして遠吠えが響いた。
 
りんと狼達の距離は、狼がりんの気配に勘付けぬほど開いている。
それでも殺生丸の足取りは自然と早まった。
微かに漂う少女の気配が、一気に緊張したのをはっきり感じ取ったからかもしれない。

 
それ故、こうして抱き留めたりんが涙を零しているのは不本意だった。


 
私はここにいる。
何故お前が泣く理由がある?

 
 
声には出さずに問いかける。

 
「―――殺・・・生丸さま・・・。」

 
己にしがみついているりんが、しゃくり上げながら途切れ途切れにありがとう、と呟くのを聞きとめ、妖は無意識のうちにため息を吐いた。
 
手を煩わせるな。
 
りんを見つけたら言ってやるつもりだった言葉を胸の内で飲み込む。
「行くぞ」と告げると、りんはおとなしくしがみついていた手を放した。
ようやく落ち着きを取り戻したのか、申し訳なさそうに眉を下げて殺生丸を見上げた。
 
「・・・殺生丸さま。」
「何だ。」
「ごめんなさい・・・。」
「・・・・・・。」
 
りんはしょんぼりしている。
 
殺生丸は何を言うべきかしばし考えた。
叱言も慰めの言葉も妖の脳裏には浮かばない。
ひとまず、一番に伝えておくべきことを口にした。
 
「りん。」
「はい。」
「迷い込んだ際は無闇に動き回るな。」
「?」
 
りんは妖の意図を察しかねているのか、小首を傾げている。
 
「お前がどこにいようと、私には匂いでわかる。」
「あ・・・。」
「その場でじっとしていろ。」
 
それだけ告げて、妖は口を閉ざした。
返事を待たずに踵を返す。
 
りんは慌てて小走りに後を追ってきた。
その足取りが普段よりおぼつかないのを感じ、殺生丸は振り返った。
小さな体が冷や汗にまみれ、手足に無数の傷がついているのが目に留まった。
 
(恐怖に駆られて逃げていたか。)
 
抱き上げてやる程ではないが、それなりの疲労とダメージはあるようだ。

 
「・・・?」
 
突如目の前に差し出された妖の右手を、りんは驚いて見つめた。
何を意図した右手かすぐには理解できなかった程だ。
しかし妖の眼差しは平生と全く変わらない静けさでりんを見下ろしていた。
 
「行くぞ。遅れるな。」
「は、はいっ。」
 
りんは差し出された手を握った。
再び歩き出した妖の足取りは普段よりずっとゆったりしていた。
 
握られた左手が温かい。
 
狼の遠吠えが再び森にこだましたが、
りんの体はもう震えはしなかった。

 
(さっきの殺生丸さまの言葉・・・どういう意味かな?りんが動き回ると、それだけ匂いが分散されるってことかなぁ。じっとしていた方が早く見つけられるって意味なのかな。それって、りんが迷子になったら探してくれるっていうこと・・・?)

 
妖の端正な横顔を見上げてそんなことを考えていたら、
にわかに幸せな気持ちになった。
知らず知らずのうちにえへへ、と笑っていると、不審そうな表情をした妖に
こう問われたものだった。
 




 
 
「――――何を笑っている?」
「あ、殺生丸さま!」
 
我に返ったりんは嬉しそうに顔を上げた。
妖を見上げ、にっこり笑う。
 
「今ね、一番最初に迷子になった時のこと思い出してたんだ。」
「?」
「あの時もこうして殺生丸さまが迎えにきてくれたなぁって。迷子になったらその場を動いちゃいけないってことも、その時教えてもらったんだよね。」
 
だから今日はりん、ここを動かなかったよ。
 
 
得意げに胸を張って言うりん。
迷子になること自体が問題なのだが、殺生丸は何も言わなかった。

切り株にちょこんと腰掛けているりんに歩み寄り、右手を差し出す。
 
「行くぞ。」
「はいっ。」
 
低い体温の手を握りながら、りんは嬉しそうに笑みを浮かべた。

 
誰よりも慕わしい妖の、この優しくて強い右手が差し伸べられるなら、
森で迷い込むことさえもはや恐怖にはなり得ない。

(迷子になるとこうして手を握ってもらえるから、実はちょっぴり嬉しいんだ・・・なんて言ったら、さすがに怒られちゃうかな。)

柔らかく握り返してくれる妖の右手を見つめながら
りんはこっそり笑った。

 
空に浮かぶ十六夜の月が、二人の道行きを淡く照らしていた。






















アニメ「殺生丸さまと永遠に一緒」から発想をいただいた話です。

あの時、あのお坊さんがいなければ
兄上がりんを迎えにきてたんだよな・・・くそー見たかった!!(ジタバタ

という悔しさきっかけで生まれた話でした^^

 
読んで下さった方、ありがとうございます!

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