His real intention

前回に引き続きクラティ話。

シリアス・・・かと思いきやそうでもありません。（笑）

よろしければつづきから是非～（＾＾）

ティファの背中が震えている。

 

・・・泣いている。

 

いつも明るくて、優しくて、強い彼女が。

 

どうしたのか、という言葉は愚問以外の何物でもない。

俺のせいだという事はこの上なく明確なのだから。

 

なす術もなく立ち尽くす俺の目の前で、彼女は涙を流す。

 

背中で俺を拒絶して、辛そうに嗚咽して、まるで子どものように。

 

His  real  intention

 

妙に胸のあたりが重くて、ティファはうっすら目を覚ました。

 

まだ覚醒し切らない意識の中で、もう一度眠りに入ろうとした瞬間。

 

「・・・どこにも行かないから。」

 

頼りなげに耳に届いた小さな小さな声。

 

たちまち覚醒して胸元を見れば、クラウドが眉を寄せてしがみ付いていた。

 

「クラウド？」

 

問いかけても反応はない。どうやら彼は眠っているようだ。

 

何かいやな夢でも見ているのだろうか。

辛そうな表情にティファの胸が痛んだ。

 

黄金色（こがねいろ）の髪を撫でて低く囁く。

 

「どうしたの、クラウド？」

 

すると、クラウドが再び呟いた。

 

「ティファ、大丈夫だ。」

 

「・・・え？」

 

ティファは驚いてクラウドに視線を落とす。

クラウドは相変わらず眉を顰めて眠っていたが、ティファの腰に回った腕に力がこもった。

 

「どこにも行かない。俺はもう、絶対どこにも行かないから。ずっとティファの傍にいる。大丈夫だ。約束する。だから・・・泣くな、ティファ。」

 

ティファの目が大きく見開かれる。

 

もしかして、夢の中にいるのは、私？

私が泣いているの？

だからそんなに・・・辛そうな顔して眠ってるの？

 

クラウドの腕が震えている。

 

ティファは小さく息を吐いた。

 

・・・泣いてるのはどっちよ。そんな顔して寝ちゃって。

本当は知ってるよ。

あなたは最初からどこへも行きたくなかったってこと。

 

ねぇクラウド、もしあなたの夢の中で私が泣いているのなら、それはあなた自身の姿なんだよ。

本当はどこへも行きたくなかったんだよね？

ずっと・・・寂しかったんだよね？

もう二度とココを手放したくないんだよね？

 

ティファはクラウドの頭をふんわり包み込んだ。

 

「・・・大丈夫だよ、クラウド。もう二度と独りになんかさせてあげないから。もうどこへも行かせてあげないから。あなたが望む限り、永遠に一緒にいるから。・・・だから泣かないで、クラウド・・・。」

 

つんつんした綺麗な髪を優しく梳きながら繰り返す。

ティファの言葉が、眠りの淵に沈んだ意識にも届いたのか、クラウドの表情が少し緩んだ。

 

そんな彼の様子を見てティファも微笑する。

 

そっと額に唇を落とせば、クラウドの口元がニヘッと下がった。

 

（わかりやすい・・・）

 

思わず笑いが込み上げる。

 

すっかり皺の消え失せた表情で無心に眠るクラウドが何よりも愛しい。

 

クラウド、おやすみ。もういやな夢は見ないから安心して眠って。私はいつでもここにいるから。

 

心の中でそう語りかけながら、ティファも静かに瞳を閉じた。

 
 

どうか安らかで穏やかな眠りを。

 

 

 

 

翌日。

 

クラウドはどういう訳か、やけに晴れ晴れと目が覚めた。

何かいい夢を見た・・・ような気がする。

 

階下に下りていけばティファがキッチンで忙しそうに立ち働いていた。

 

「おはよう、ティファ。」

 

声を掛けると、ティファは少しびっくりした表情で振り向いたが、すぐににっこりと微笑んでくれた。

 

「おはよう、泣き虫くん。」

「泣き虫・・・？」

「ふふ、何でもないよ。今日は早く起きたのね？」

「ああ。理由はわからないが普段よりすっきりと目が覚めた。気分もいい。」

「単純なんだから。」

「・・・単純？」

 

クラウドは首を傾げるが、ティファは実に楽しそうにくすくす笑っている。

クラウドは眩しそうに目を細めて笑うティファを眺めた。

彼女の笑顔はもちろんクラウドにとって何より嬉しいものだ。

 

「ティファ。」

「ん？」

「やっぱり今日はすごくいい朝だ。」

 

両腕を伸ばしてティファを引き寄せる。彼女の肩に鼻先をうずめるのはクラウドの甘え表現だ。

 

「クラウド、朝ごはん焦げちゃうよ。」

 

そう言いつつもティファはクラウドの背中を優しく撫でた。

 

今朝の目覚めが良かったのと、ティファの楽しそうな笑顔は、きっとリンクしているのだろう。その事が素朴に嬉しかった。

 

俺たちは、互いの喜びが互いの幸せになっている。

 

不意に涙が出そうになるくらい、それは甘く幸せな考えだった。

 

「・・・ティファ。」

「なぁに？クラウド。」

「今日は・・・仕事行きたくないな。」

「え？」

「ティファの傍にいたい。」

「で、でも・・・。」

「どこにも行きたくない。」

 

ティファは目を見開いた。

 

（クラウド、それ・・・・・・。）

 

 

しかしティファが答えるより先にクラウドはティファを解放し、苦笑した。

 

「ごめん。子どもみたいな事言った。」

「クラ・・・。」

「でも本音。」

「え？」

「顔洗ってくる。」

 

立ち去り際に素早くティファの唇を掠めると、クラウドはキッチンを出て行った。

その後ろ姿を見送りながら、自分の顔が真っ赤になっていることをティファは悟った。

 

昨夜の記憶がフラッシュバックする。

 

―――本当はどこへも行きたくなかったんだよね？ずっと・・・寂しかったんだよね？

もう二度とココを手放したくないんだよね？

 

“ティファの傍にいたい。どこにも行きたくない”

 

クラウド、それ、夕べの答え・・・？

 

突如背後で鍋が噴きこぼれる。

ティファははっと我に返り、慌てて火を消し止めた。

 

「・・・ク、クラウドのせいで朝ごはん台無しじゃない・・・。」

 

弱々しく抗議した時階上がにわかに騒がしくなり、間もなく元気な声を響かせて子ども達が顔を覗かせた。

 

「ティファ、おはよう！」

「おはよう！ティファ、今日のごはん何～？」

 

ティファは振り返って微笑んだ。

 

「おはよう。デンゼル、マリン。」

「・・・なんか焦げ臭くない？」

「あ！ベーコンが焦げちゃってるよ！」

「うん、ごめんね。」

「珍しいね、ティファ。何かあったの？」

「今日は珍しくクラウドが早起きしたせい、かな。」

「クラウドのせいなの！？」

「おいクラウド～！」

 

子ども達が一斉にキッチンを走り出て行く。

やがて訳も分からず子ども達に責め立てられたクラウドが首を捻りながら戻ってきた。

 

ティファはくすくす笑う。

 

ごめんね、クラウドのせいにしちゃって。でも、間違ってないんだからね？



「・・・ティファ、腹減った・・・。」

「はいはい、今できるから。」

ティファは笑いをおさめると、腕まくりして調理台に向き直った。


さぁ、どう仕上げていこうかな。

 

今日も幸せな一日が始まっていく。










 

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クラティでほのぼの話を書いてみたい、ということで挑戦してみました。（今まではシリアスかギャグしかなかったような・・・）

ほのぼのできたかは自信ありませんが、少しでも温かい話になっていたら嬉しいです（＾＾）

読んで下さった方、ありがとうございます。　　目次（ＦＦ７ＳＳ）へ戻る