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ただ、ひたすらに君を恋う
つづきから、前回小話のりんちゃんverです^^

こちらも下書きなしで書いてますが・・・
よろしければつづきから是非♪








































「わしや殺生丸さまは妖怪だから百年くらいどうという事もないが、人間のお前はとっくに死んでおるだろうからなぁ」


老妖怪のその言葉が、幼いりんの胸に突き刺さった。













ただ、ひたすらに君を恋う
















かごめに教えてもらった『さんたくろぉす』の話。
それがあまりにも面白くて、興をそそられるなんてことはないだろうなぁとは分かりつつも、
大好きな妖に話してみた。

殺生丸さまだったら何が欲しい?と尋ねたりんは、逆に妖から問いかけられ、自分の欲しいものを何も考えていないことに気付いた。

競争しようと持ちかけたりんは真剣に考え込む。

しかし、すぐに欲しいものが何も思い浮かばないという結論に達した。


この村に預けられ、人の優しさや温かみに触れた。
質素だが栄養のある食事、温かい寝具、雨風を防ぐ粗末ながらもしっかりとした造りの家屋、怪我や病気を治してくれる薬草。
どれもこれも自分には過ぎた物だと感謝している。


加えて、着物や櫛など、年頃の少女が欲しがりそうな贅沢品は
常に妖から贈られてきた。


りんは生来物欲に乏しく、身に余る贅沢品を欲しいと望むことなどなかったが、
妖から贈られる品々はやはり野育ちの目にも美しく、何よりその妖の気持ちが嬉しくて、
いつも大喜びで受け取っていた。


りんは、幸せ者だ―――――。


改めてそう実感し、少女は目を細める。


だが、それではこの「競争」に負けてしまう。
元より妖がこんな一方的な競争に付き合ってくれるとは思っていないが、言い出した側が放棄してはいけないだろう。


(でも、物で“欲しい”って思うものは思いつかないなぁ。・・・じゃあ、りんが普段から望んでいることは?)


考え方を変えてみた。
すると、不意に幼き日の記憶が蘇った。




殺生丸さまと、いつまでも一緒にいられますように・・・。


空を流れる星々にそう願っていたあの頃。
妖が許してくれる限りいつまでもついて行くことができる、一緒にいることができると、無邪気に信じ込んでいた。

そんなりんに現実を教えたのは、殺生丸の忠臣である邪見の何気ない一言だった。


それ以来、りんは気付いてしまったのだ。


種族が違う。寿命が違う。秘めている力が違う。


恐ろしい妖怪を一撃で葬り、人間にはとても越えられない険しい崖や山も軽々と越えて行く。
その金色の瞳は闇夜でも昼間と変わらず辺りを見通すことができ、
優れた嗅覚は姿を見せない存在でも正確に察知する。

いつも一緒にいてくれるこの人は、こんなにも自分とかけ離れた存在だった。


りんは時折思い返しては笑ってしまう。
いつまでも一緒にいるのだと信じていた、あの頃の自分の幼さを。


そんなことできる訳ないのにね・・・。


そう思う度に小さな胸がきりきりと痛んだ。
泣き出しそうになってしまったこともある。
慌てて村はずれまで駆け出し、気持ちが落ち着くまでそこで過ごした。


そんなりんの様子に気付き、心配した犬夜叉がついてきてくれたことがある。

村はずれの大木の下に縮こまって座るりんの隣に腰を下ろし、
何かあったのか、と問いかけた犬夜叉は黙ってりんの言葉を待っていた。

りんは隣に佇む犬夜叉の、殺生丸にそっくりな銀色の髪の毛を見つめていた。


「・・・犬夜叉さま・・・。一つだけ、質問してもいいですか?」
「おぅ。」
「犬夜叉さまにとって訊かれたくないことかもしれないのですが・・・。」
「何でぃ、言ってみろ。」


殺生丸と同じ金色の瞳に見下ろされ、勇気を振り絞って口を開いた。


「犬夜叉さまは・・・半妖なんですよね。」
「あぁ。」
「かごめさまは・・・人間、ですよね。」
「そうだな。」
「・・・かごめさまは、犬夜叉さまより先に・・・いなくなってしまうけど・・・・・・それでも犬夜叉さまはずっとかごめさまの側にいますか?」
「!」


一番触れられたくないことを切り込まれた犬夜叉は顔を歪めた。
しかし、心細げに見上げてくるりんの潤んだ瞳を見て、自分とかごめのこの問題はそのままりんと殺生丸にも当てはまることなのだと気付いた。

寿命の遥かに隔たった関係。
共にいつまでも歩んでいくなど、叶わない。

自分も、かごめも、りんも、そしてきっと殺生丸も、
常に頭の片隅にその事実がある。

りんが抱え込んでいる不安や悲しみは、かごめのものでもあった。

犬夜叉は一つ息を吐き、静かに話し出した。


「確かに、かごめは俺より先に・・・いなくなっちまう。それは変えられない。」
「・・・はい。」
「でもな、かごめが俺の側で眠ってくれたら・・・それは俺にとって幸せなことなのかもしれない。」
「幸・・・・・せ?」
「俺の側で眠るってことは、それまでずっと俺と共に歩いてくれたってことだろ?それはつまり、あいつの人生を俺の側で全うしてくれたってことだ。」
「・・・・・・。」
「かごめがそれを決めてくれたんなら、俺はきっと幸せ者なんだろうと思う。」


りんは俯いた。犬夜叉は言葉を続ける。


「先にいなくなってしまうのは分かってるけど、俺はずっとかごめの側にいる。」
「・・・・・・。」
「あいつの人生を俺の側で全うしてほしいから、な。」
「・・・・・・。」
「殺生丸もきっと同じだろうぜ。」
「!」


りんが顔を上げた。


「ずっと不安だったんだろ?」
「・・・りんは・・・。」
「あいつと・・・殺生丸とずっと一緒にいたいのか?」
「はい・・・。」
「お前自身の気持ちなんだな?」
「はい。」
「それなら、殺生丸は幸せ者だ。」


犬夜叉は、りんの頭をぽんと叩いた。


「りん、おめぇは何も心配しなくていいんだ。」
「そうなのですか・・・?」
「ああ。ずっと殺生丸の側にいてやればいい。それだけでいいんだ。」
「殺生丸さまは、許して下さるでしょうか。」
「当たりめぇだ。いや、むしろそれを望んでるはずだ。言葉には出さねぇだろうがな。」


普段は何を考えているかさっぱり分からない、分かりたくもない兄だが、このことに関しては断言できる。
同じ立場の男として。


「犬夜叉さま。」
「んぁ?」
「もしそうなら、りんは幸せ者です。」
「そうかい。」
「かごめさまも幸せです。」
「そ、そうか・・・?」
「はいっ。同じ立場の女として、りんは確信してます。」


犬夜叉は虚をつかれたようにりんを見つめた。
自信満々に言い切ったりんは、持ち前の明るい笑顔で犬夜叉を真っ直ぐ見据えていた。


「・・・そいつは嬉しいな。」


そう言って、犬夜叉は照れたように笑ったのだった。





風に吹かれ、夕日の光を浴びながら、りんはその時のことを思い出していた。


(欲しいものはない。だってりんの望みは、ずっとずっと殺生丸さまのお側にいさせてもらうこと)


妖の寿命からすれば、瞬きするような短い時間ではあるけれど。


邪見は言った。
いつまでも共にいるなど叶わないと。

だが、犬夜叉は言ってくれた。
ただ側にいるだけでいいのだと。
例えその時間が短いものであったとしても、りんがそう決めたのならそれでいいのだと。
そしてそれは殺生丸にとって嬉しいことなのだと、そう断言してくれた。


(永遠に・・・とか、いつまでも・・・とか、そんな欲張りなこと言わない。でも、りんの命が果てるまで、ずっと殺生丸さまのお側にいたい)


静かに自分の思考に沈んでいたりんは、
不意に後ろから伸びてきた殺生丸の腕に捉えられた。
まるでりんの願いを聞き入れてくれたかのように、全身を包んでくれる優しい腕と温かい懐。

柔らかく髪を梳かれ、自然と顔が綻んだ。

願いを込めてそっと言葉を紡げば、更に力を込めて抱き締めてくれる。
黙して語らない妖の気持ちが、りんの中に流れ込んでくるような気がした。


何も怖がることなんてない。


こうやって寄り添う二人は、種族も寿命も異なる二人だが。
穏やかな時間を共有しているこの瞬間はきっと永遠に胸に刻まれているのだと、りんは信じている。
























あとがきという名の言い訳・・・。長いです。


殺りん文は書くつもりはなかったのですが、ふと思い浮かんだのでむしゃくしゃして書いてしまいました今は反省している。
色々とアレな部分はあるのですが、でも楽しかったですv

文中に出て来る邪見の台詞と、殺生丸verに出てきた「いつかりんが死んでも――」という台詞はアニメネタです。伝説の殺りん回の時の台詞です。アニメ万歳!!

父上の遺した三振り目の刀は、伝説の殺りん映画から。
この映画はほんっっっとーーーーーに萌え映画でした。りんとかごめが攫われるというまさかのヒロイン同格扱い。そして犬夜叉と殺生丸がそれぞれ助けに向かうというまさかのヒーロー同格扱い。
何より敵キャラがりんとかごめに向かって放ったこの一言!
「この娘は十六夜と同じだ・・・」えーーーりんちゃんも込み!?込み!?(*゚∀゚)=3
「お前は十六夜だ」殺りん公式認定台詞ありがとう敵キャラよ!!!!!
十六夜さんというのは犬夜叉の母君です。
その人と同じって・・・全殺りんファンが狂喜乱舞した神台詞です。なんという敵グッジョブ(*´д`*)ハアハア

あれ、もはやあとがきですらない・・・。
えーと、文中の台詞やアイテム(違)についてはそんな感じです!←殴

また殺りん文を書けるかどうかは分かりませんが、今回はとても楽しく書けました。
寿命差カップル万歳!(≧▽≦)
読んで下さった方、ありがとうございます!

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