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願秘事
殺りんお願い話。
タイトルは「ねがいごと」と読みます。(「ねがひごと」→「ねがいごと」)
頭の弱さを露呈した当て字ですが見逃して下さい^^;
りんちゃん幼少期。旅の途中です。
よろしければつづきから是非~^^
タイトルは「ねがいごと」と読みます。(「ねがひごと」→「ねがいごと」)
頭の弱さを露呈した当て字ですが見逃して下さい^^;
りんちゃん幼少期。旅の途中です。
よろしければつづきから是非~^^
妖と旅をするようになってから、
月の満ち欠けを2回ほど繰り返した頃。
今、りんには密かな願望がある。
願秘事
りんは収穫物―――畑から盗んだ瓜を抱えて妖の元へと駆けた。
人の目の利かぬ夜の森においても、妖の居場所はぼんやりと白い光を湛えている。
まるで妖が導いてくれているようで、りんは嬉しくて仕方ない。
手にした瓜を差し出し、満面の笑みで報告する。
「殺生丸さま、ただいま!ほら、こんなに大きい瓜があったんだよ。」
「こりゃ、りん!わしを置いていくでない!」
途中でりんに置いていかれた老僕が喚きつつ走ってくる。
「あ、邪見さま、ごめんなさい。」
「しかも何だ、そんな泥だらけのまま殺生丸さまに近付きおって!さっさと離れろ!」
「えー。」
「えーじゃない!やかましいお前がお側にいては殺生丸さまのお邪魔じゃ!」
「ひどーい、邪見さま!」
瞑想していた殺生丸は目を開け、眼前で繰り広げられている喧騒に焦点を定める。
やかましさにかけてはりんにも劣らない老僕の耳障りな喚き声を不快げに睨み付けると、
何を勘違いしたのか邪見は慌ててりんを引っ張った。
「ほ、ほら、さっさとこっちに来い!」
「なんで?りん、もっと殺生丸さまとお話したい。」
「何がお話じゃ、お前が一方的に喚いてるだけだろうが。」
邪見によって妖と引き離されたりんは双頭の竜に寄りかかって座り、おとなしく瓜を食べ始めた。
大好きな瓜を満足して味わいながら、もっと大好きな妖をこっそり窺う。
再び瞳を伏せてしまった妖は
悠然と大木に寄りかかっている姿さえ凛として美しい。
(本当に綺麗だなぁ、殺生丸さまって・・・。)
りんはつい見惚れてしまう。
白銀に輝く髪も、見る者を惑わせるような深い色合いの金の瞳も、額と頬に走る鮮やかな模様も、今は無造作に投げ出されている手足も、そして――――。
(やっぱりりんって欲張りかな・・・。)
少女は願いを込めた眼差しで妖を見つめる。
(でも、一度だけでいいから・・・・・・。)
その時不意に妖が目を開き、真っ直ぐりんに視線を据えた。
少女の欲張りな願望を見抜き責めているように思え、りんは身を縮ませた。
「りん。」
「は、はいっ。」
「人里深くまで入ったのか。」
「え?・・・あ、そうかも・・・。」
今日はなかなか食料が見つからず、
普段は敬遠してしまう人里にも降りた。
なんで殺生丸さま分かったのかなぁ・・・と考えていると、すぐ側の邪見が飛び上がってひれ伏した。
「も、申し訳ありません、殺生丸さま。この邪見、配慮が至りませんでした。」
「どうしたの、邪見さま?」
「いいから早く来い!水浴びするんじゃ!」
「ええ!?こんな夜に!?水冷たいよ。」
「つべこべ言うでない!殺生丸さまがご不快に思われているだろうが!」
りんは訳が分からないというように殺生丸に視線を向けた。
「どうして?殺生丸さま。」
「・・・・・・。」
黙殺する主に代わり、邪見が胸を反って答えた。
「人里に降りたお前には人間どもの臭いが染み付いているんじゃ。それが殺生丸さまにとってはご不快なのじゃ。」
「人間の臭い?」
りんは自分の胸元を見下ろし、目を上げて再び妖を見た。
「殺生丸さま、人間が嫌いなの?」
「・・・・・・。」
「なんで?なんで嫌いなの?りんも人間だよ。りんのことも嫌いなの?どうして?」
「・・・・・・。」
「ええぃ、分かりきったことを訊くでない!」
邪見が口を挟んだ。
「人間どもはあらゆる点で妖怪に劣るひ弱な種族じゃ。そのくせ欲深さだけは群を抜いておる。群れないと何も出来ぬくせに、己の欲望の為には平気で他人を利用する。まことに浅ましい生き物、それが人間じゃ!」
ひ弱で、欲が深くて、浅ましい。
りんはそれらの言葉を噛み締め、俯いてしまった。
的確な表現に泣きたくなる。
「そうかもしれない・・・。」
どうしよう、りんも間違いなく人間だ。
「だって・・・りんも欲張りだもん。」
「な、何を言っておる?」
泣き出しそうなりんを見てさすがに邪見も慌てた。
「食い意地のことを言っているなら、それは別に・・・。」
「違うもん。りん、最近ずっと欲張りなこと考えちゃってるもん。どうしよう邪見さま・・・殺生丸さまに嫌われちゃうよ。」
「い、いや、それは・・・・・・。と、とにかく早く来い!」
邪見に引っ張られるようにして、りんは森の奥へと消えていった。
殺生丸はその様子を無表情で見送る。
ひ弱で欲深くて浅ましい。
邪見が下した人間への評価は、概ねの妖怪の人間に対する意見と合致する。
妖怪にとって人間はその程度の生き物でしかない。
そんな人間と大妖怪の父が恋に落ちたことはこの上ない屈辱であり最大限に非難されるべきことであり、その事実もあって殺生丸は人間という生物をこの世の何よりも嫌悪していた。
りんという名の人間の少女を連れている現在も、人間に対する評価と感情はいささかも変わらない。
少女が何を思って自らを「欲張り」と評して泣いたのか、
殺生丸にとっては何の興も引かれない些事だった。
その夜のりんはしょんぼりと落ち込んでいた。
いつもならばうるさいと叱られるまでお喋りを絶やさぬ明るい少女が、元気のない様子で黙って膝を抱えている姿は
ただでさえ小さな体を更に一回りも二回りも小さく見せた。
邪見もそんなりんが気に掛かるのか、あれこれ質問や小言を浴びせたが、りんはどことなく気だるげに一言二言答えるのみだった。
りんには熱があったのだ。
小さな体で一日中歩き通し、夜更けるまで食料を探し回り、冷え切った川の水で水浴びをしたのが決定打となった。
妖の旅は幼子の体には過酷なものであり、
ここ数ヶ月の無理がたたってりんの体は遂に悲鳴を上げた。
ここ数ヶ月の無理がたたってりんの体は遂に悲鳴を上げた。
りん自身にはその自覚はない。
今夜はやけに寒いなぁ、何だか頭もぼーっとするし、喉も痛いしなぁ・・・と思っただけで、やがて丸くなって寝てしまった。
だが妖の目にははっきりと異常が見てとれる。
苦しげに寄せられた眉や浅く早い掠れた呼吸を繰り返すことなどから、高熱が出ていることが察せられた。
眠りながら体を丸め暖を取ろうとする様子を見て、殺生丸は立ち上がった。
だらしなく眠りこけている老僕を踏みつけ、りんの傍らに膝を付く。
触れなくとも熱を出した体が熱くなっていることは伝わってくる。
それでもがたがたと震え続けているりんは紛れもなく寒いのだろう。
殺生丸はりんの体を抱き上げ、己の妖毛で包んだ。
力の抜けた小さな体は形容しがたい弾力をもって殺生丸の懐に収まった。
どことなく不可思議な気持ちになりりんを見下ろすと、
熱のせいで潤んだ瞳をうっすらと開け、少女がこちらを見上げていた。
「殺生丸さま・・・。」
「・・・・・・。」
「り、りんこと・・・嫌いになっちゃったの・・・?」
ぽろぽろ涙を零すりん。
思いがけない言葉に少々面食らい、問い返す。
「何故そんなことを訊く?」
「せ、殺生丸さまは、人間の『欲深い』こと、みんな分かっちゃうんでしょう?だから、りんの欲張りなお願いにも気付いたんだよね?」
「・・・・・・。」
どうやら邪見の言葉を色々と曲解しているようだがここでいちいち訂正する気にはなれず、
先を促した。
「お前は私に何か望んでいるのか?」
「ごめんなさい・・・。りん、よ、欲張りになっちゃった・・・。」
「言ってみろ。」
それでもまだ言いあぐねていたりんだが、
妖の強い視線を受けてようやく口を開いた。
「・・・・・・あのね・・・・・・殺生丸さまの・・・もこもこ・・・。」
蚊の鳴くような声で絞り出されたりんの「欲張りなお願い」。
意味が分からず、殺生丸の表情に?が飛び交う。
「もこもこ?」
「いつも後ろから見ていて、とっても綺麗であったかくて柔らかそうで、ずっと触ってみたいなぁって思ってたの・・・。」
「・・・・・・。」
「それと、一回でいいからもこもこに包まれてみたいなぁって・・・。」
「・・・・・・それがお前の願いか?」
「ごめんなさい・・・。」
俯いて顔を隠すりん。
殺生丸は呆気に取られる思いで少女を見下ろしていた。
「だ、だから・・・今目が覚めてもこもこに包まれてるのを見た時、殺生丸さまはりんの欲張りに気付いてたのかもしれないと思って・・・嫌われちゃうと思って・・・。」
「・・・・・・。」
「殺生丸さま、りんも欲が深くて浅ましい人間だけど・・・りんのこと、嫌いにならないで。」
「・・・・・・。」
「・・・・・・。」
今度は殺生丸の方が頭痛を覚えていた。
つくづく人間は―――いや、この少女は理解の範疇を超えている。
つっこみ処は多々あるが、殺生丸は敢えて言葉にせず、少女の頭を軽く撫でた。
「・・・もう寝ろ。」
「はい・・・。」
りんはおとなしく“もこもこ”に顔をうずめ、瞼を閉じた。
大好きな妖に嫌われたのかもしれないと恐怖を抱えた一方で、どこか嬉しそうな表情を浮かべている。
(殺生丸さま、殺生丸さまのもこもこはやっぱり・・・ううん、りんが想像していたよりずっと綺麗であったかくて柔らかいよ。ありがとう、殺生丸さま。もし殺生丸さまがりんのこと嫌いになっちゃっても、りんはずっとずっと、殺生丸さまのことが大好きです。)
伝えたい言葉は眠気と熱に負けもはや声にならず、
少女の口の中で消えていった。
一方、眠りに落ちた少女を見守る妖の瞳に平生の殺気を含んだ鋭い眼光はない。
―――りんのこと、嫌いにならないで。
必死で訴えていた少女の懇願を思い出し、
図らずも妖の口元に微笑が浮かぶ。
ただ穏やかに眠ればいい。
幸せそうに殺生丸に体を寄せて眠るりんの髪を、
妖の白い手はいつまでも撫で続けた。
世界が嫉妬するもこもこ。
もこもこに包まれ、兄上に抱かれて眠るのはりんちゃんの専売特許です、という話でしたw(どこが?
旅の初期の話なので
まだ兄上のツンデレ具合はツンの割合の方が大きいですがデレる時はしっかりデレます。
兄上はりんにだけ優しければいいよ(*´▽`*)
読んで下さった方、ありがとうございます。
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