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雲の切れ間
初・邪見語り。
邪見から見た殺りんと、その変化。

旅の途中の話です。

よろしければつづきから是非~^^





























無口で気難しくて何を考えているのかさっぱり分からない気まぐれな主と、
無力でやかましくて主の周りを飛び跳ねてばかりいる人間の小娘に挟まれた、不遇の家来。
 
それがこのわし、邪見さまじゃ。
 
 
「殺生丸さまどこ行っちゃったのかなー。」
「知るかっ。本来ならわしはお前のお守りではなく・・・。」
「何だかお腹空いちゃったな。後でお魚獲りに行ってもいい?」
「人の話を聞け!」
「ちょっと川探してこようかな。」
「ま、待て待て。殺生丸さまが戻られるまでここにいろ。」
「はーい。殺生丸さま~殺生丸さま~♪」
「歌わんでいい!」

 
・・・やれやれ、なんでわしが小娘のお守りを・・・。
 
かわいそうなわしの深いため息が、今日も空を流れてゆく。
 







 
雲の切れ間








 
りんは拾った娘だ。
 
正確に言うなら、主語は殺生丸さま、目的語は「りんの命」ということになるだろうか。
狼に噛み殺されていたところを天生牙によって一命を取りとめ、
そのままわしらについてきた。
 
りんが加わってから、わしと殺生丸さまの旅路は随分変わった。
高くて明るいりんの声が絶えず主に話しかけたり、時には調子っぱずれの歌を歌ってわしをうるさがらせる。

実際の道行きも大きく変化した。
りんのような小娘を危険な場所や戦闘に連れてゆける訳もなく、
主は必ず手前の安全な場所へりんを置いてゆく。
そして、用が済めばりんを迎えに戻ってゆく。
 
夜になれば主の妖毛に潜り込んで呑気に眠りこけているりんを見ると、
何とも複雑な気分になる。
 
 
図々しく、厚かましい、不思議な娘。

 
殺生丸さま相手に何故そのような真似ができるのか。
どうしてそのような真似が許されているのか。
仮にわしが同じことをしたら、これまでの全身全霊の奉公を一秒も斟酌されることなく真っ二つにされるに100票。
・・・・・・悲しきかな。


 
「邪見さま、この近くに川あるかな?」
「あるとは思うが・・・。良いか、わしが水深と水温を確かめてから入るんじゃぞ。」
「はーい。でも邪見さま、この間みたいにそのまま川に落ちないでね。」
「・・・・・・・・・はい。」


 
以前のりんは口の利けぬ娘だった。
 
目の前で家族を皆殺しにされた精神的打撃の為に
言葉を失ってしまったらしい。
人間のなんと弱々しいことか。
 
・・・・・・だが、言葉を取り戻すことも可能だったはずだ。
心に負った傷が癒されれば、弱々しいくせに図太い人間という生き物はやがて快復できる。

 
しかしりんは快復できなかった。
心の傷が癒されることなど望むべくもなかったからだ。

 
生き残ったりんは、生きながらにして地獄に突き落とされた。
ろくに食べ物も与えられず、雨風を凌ぐ場所は半分土手に埋もれたあばら家。
 
りんを拾った当初は随分とぼろぼろな娘だと思ったものだが、狼によって負わされた傷はたった一箇所だった。その他の傷は全て人間によって負わされたものだった。
無数についた手足の青痣も、腫れ上がった右目も、切れた唇も。
 
りんは何も言わなかったが、鋭い嗅覚を持つ殺生丸さまはお気付きになっていた。
 
薄汚れて見るからに栄養状態の悪い肌色をしていたりんが、ずっと愛情に飢えていたということくらい、
人間の小娘について何の知識も持たぬわしにも瞬時に理解できた。
 


 
「邪見さま、りんが一人でこんな大きなお魚獲ったらびっくりする?」
「あーすごいすごい。いいか、体を冷やす前に上がるのじゃぞ!」
「はーい。邪見さまこそ、この間みたいに風邪引いて寝込まないでね。」
「・・・・・・・・・はい。」



 
りんは随分明るくなった。
 
人里にいた頃は与えられなかったものが、殺生丸さまによって十二分に与えられているからだろう。
食事、着物、りんの居場所、そして愛情といったところか。
 
 
・・・ん?愛情?

 
「りん、殺生丸さま大好き!」という台詞は毎日聞かされているからいいとして、殺生丸さまはりんのことをどう思っておられるんじゃ?
いや、大切に思っていることは間違いないが・・・

そもそもなんでりんが大切なんじゃ?
あれほど毛嫌いしていた人間ではないか。
何の力も持たぬ小娘ではないか。
以前の殺生丸さまなら即座に斬り捨てる対象のはずだが・・・。
 
 
  
わしはぼんやりと、昔のことを思い出した。
 
 


 
(主は何が足りないのだろう。)
 
大妖怪の血を引く主に仕えてから幾星霜、忠実な老僕であるわしが、常に抱いている疑問だった。
 
「殺生丸さま、今日は良い天気でございますな。」
「・・・・・・。」
「このような日は眼下に流れる景色も一段と見事で・・・・・・。」
「煩い。黙れ。」
「も、申し訳ございません・・・!」
 
絶対零度の命令に冷や汗を拭いつつ、
わしは密かに嘆息した。
悠然と飛翔する主の眼差しは、この美しい陽気の影響を少しも受けていないようだ。
冷たく、どこか飢えたような色を湛えている。
 
主は何が足りないのであろう。
 

 
例えば、こんな事があった。
 
ある日、鳥の妖怪が現れた。
顔は人間だが体はさながら蛇のようで、両足の爪は剣のように凶悪な光を放ち、口には鋸のような鋭い歯が並んだ巨大な怪鳥だった。
 
「・・・い、い、い、以津真天・・・!」
 
相変わらずの無表情を浮かべている主とは対照的に、
わしは腰を抜かしてへたり込んでしまった。
 
その不気味な怪鳥は主の前に舞い降りると、耳を劈くような声で鳴いた。
 
「殺生丸か。そちの妖力、貰い受けるぞ。」
「・・・・・・何だ、貴様は。」
 
主は巨大な鳥を見上げた。
 
「せ、殺生丸さま、これは以津真天(いつまでん)という怪鳥でございます。疫病をもたらす妖怪で、一説では死者の怨念が鳥の形になったものとも言われており・・・。」
「要はただの鳥か。」
 
殺生丸さまはわしの説明を遮ると、怪鳥に向かって一歩踏み出した。
 
「邪魔だ、どけ。」
 
言うが早いが爪を振るう。
しかし以津真天は難なく主の攻撃をかわした。
 
「そのようなか弱き爪など、我の体には決して届かぬ。」
 
嘲笑と共に振るわれた以津真天の爪は、旋風を起こして主に襲い掛かった。
後方へ飛び退いてかわした殺生丸さまだが、その瞳が真っ赤に染まった。
化け鳥の言葉が屈辱なのは間違いなかった。
 
主の口が見る見るうちに裂けていき、鋭い閃光を放った直後に姿を現したのは、本来の姿となった主だった。
 
何度見ても改めて圧倒されずにはいられない堂々たる体躯の主は、
怯んだ以津真天の隙を逃さずに喰らいついた。
身の毛もよだつ断末魔の叫びを上げた化け鳥が、なす術もなく八つ裂きにされていく様を、わしは息を呑んで見つめた。
 
 
(やはりこの御方はただの妖怪ではない・・・。)

 
他を遥かに凌ぐ圧倒的な妖力。
その力を以って容易く命を葬る冷徹な心。
自分の仕える主の強大さを改めて思い知らせれた出来事であった。
 


 
例えば、こんな事もあった。
 
ある夜、女の妖怪が現れた。
抜けるように白い肌と、足元まで届く漆黒の髪を持つ美しい女だった。
その女はしとやかな動作で頭を下げ、主に寄り添うように座り込んだ。
 
「き、貴様っ!気安く殺生丸さまに触れるでないっ!」
 
わしが喚くと、女はちらりと視線を向け、とろけるような笑みを浮かべた。
 
「失礼致しました。わたくしは川姫と申します。」
「あ・・・・・・。・・・ま、まぁ・・・わかれば良いのじゃ、うん。」
 
その微笑に呆気なく絆されたわし・・・いやいや、敢えて見逃してやったのじゃがな。
 
川姫は主に向き直ると、
しっとりと艶を含んだ声で語りかけた。
 
「ご挨拶もなく現れた無礼をどうぞお許し下さいませ。わたくしはこちらの川に住まう妖怪でございます。人間はわたくしを害為す者とみなして近寄りません。・・・わたくしは常日頃から語り合う者もなく、寂しい身の上にございます。」
「・・・・・・。」
「失礼ではございますが、今宵も寂しさのあまり地上に迷い出たところ、貴方様のお姿を拝見致しました。なんてお美しい方なのだろうと、一目で心を奪われてしまった次第です。」
 
川姫は殺生丸さまの手を取ると、
そっと自分の胸元に添えさせた。

 
「今宵、わたくしの寂しい境遇を慰めては下さいませぬか。」

 
伏し目がちな仕草は愛らしく、どのような男も心奪われずにはいられぬような美しさだったが、主はあっさりその手を振り解いた。
 
「私を人間と同じ手口で騙せると思うな。」
 
冷ややかな口調とそれ以上に凍った視線で、川姫を一瞥する。
 
「そうして男共をたぶらかしては、精気を吸い取ってきたのだろう。」
 
下らぬ浅知恵の女が。
吐き捨てるように言うと、徐に立ち上がり歩き出した。
 
「お、お待ち下さい。」
 
川姫は慌てて主に縋った。
 
「確かにわたくしは人間の精気を吸い取る妖怪にございますが、同じく妖怪の身でいらせられます貴方様の精気を吸い取ることはできません。今宵のお誘いはわたくしの真心からのものでございます。」
 
恐らくその言葉は真実のものであろうが、主は苛立ったようにその手を振り払い、冷たく言い放った。

 
「死にたくなければとっとと失せろ。」

 
殺気とも言える鋭い妖気を浴びて呆然と立ち竦んだ川姫を振り返ることもなく、
主は足早にそこを後にした。
 
 

 
主は何が足りないのだろう。
 
後に従い旅を続けながら、不思議に思う。
 
妖力も、美貌も、由緒正しき家柄も、何もかもを持ち合わせているかのように見える主は、冷めた瞳の中に飢えたような色を常に湛えている。

 
何が足りないのだろう。何が必要なのだろう

 
父君の遺した剣を手に入れたところで、主の瞳から冷ややかさが消えるとは思えない。
 
他を凌駕する絶対的な妖力も、
他を引き付ける絶世の美貌も、
主の心を満たすものではなかった。
 
主は何が足りないのだろう。
何を手に入れれば満たされるのだろう――――――
 
 
 


 
「あ、殺生丸さま!」
 
回顧録に浸っていたわしの意識を、りんの甲高い声が引き戻す。
主の姿を見とめたりんがぱっと駆け出していく。やれやれ、騒々しい奴じゃ・・・。
 
「殺生丸さま、おかえりなさい!今日はいいお天気だね。暑いから川辺へ行ってきてもいい?お魚も捕りたいの。殺生丸さまはどこへ行ってきたの?お空を飛んだらお日様が近いから暑くならない?」
 
口喧しく主の足元にじゃれつく姿は子犬のよう。
大きな瞳に嬉しさをいっぱい湛えて主を真っ直ぐ見上げる。
 
対する主はさぞや苛立っておられるだろう・・・と恐る恐る窺うと、
りんのお喋りに返す言葉も向ける視線もないが、
静かな瞳で遠方を見据えている。
およそ感情を感じさせぬ無の瞳だが、彼(か)の気はむしろ凪いでいると言える。
 
 
(やれやれ・・・・・・)

 
思わずため息が漏れた。
 
あれ程人間を嫌悪していた主が何故・・・という思いはあれど、
この少女を連れ歩くようになってから、消え失せたものが一つある。

 
「殺生丸さま、お空飛べていいなぁ。りんも大きくなったら飛べるようになる?」
「・・・さぁな。」
「りん、頑張るね。そしたら殺生丸さま、りんとお空でお散歩してね。」
「・・・・・・馬鹿なことを。」

 
この少女を連れ歩くようになってから消え失せたもの。
 
それは、主の瞳の奥に在った、飢えにも似た苛立ちの色。
 
強大な妖力も絶世の美貌も埋めることのできなかった空虚。
ましてや愛情だの友情だのという類のものは露ほども求めていない主の、確かな空洞。
 
(どうしてこんな小娘が・・・・・・。)
 
首を捻らざるを得ない。
しかし事実として、主の中に在った空洞を
この少女は満たしたのだろう。
 
 
「殺生丸さま、りんお腹空いちゃった。水辺を探しに行ってもいい?」
「・・・阿吽を連れて行け。一人で森の中を歩くな。」
「はーい。行ってきます!」

 
空洞を抱えていた妖と、愛情に飢えていた孤児。
 
それをお互いに補い合っているのだとしたら。

 
「りん。」
「はい?」
「・・・遅くならぬうちに戻れ。」
「はいっ!」


やはりこの二人は、出会うべくして出会ったのであろうな。 
























 


邪見から見た兄上とりん。

だらだら書いた割には、テーマが「このバカップルめ」の一言に集約されてしまった気がしてなりません。
殺りんは誰から見てもラブラブってことで\(^O^)/

読んで下さった方、ありがとうございます。

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無題
はじめまして(^^)
いつも拝見させて頂いておりますが、いつ見ても素敵な作品ばかりで嬉しく思っています。
忙しい日々だとは思いますがこれからも頑張ってくださいねo(^-^)o
  • 葉月 さん |
  • 2010/05/31 (20:09) |
  • Edit |
  • 返信
葉月さんへ
初めまして!
いつも拙宅に来て下さっているとのこと、とても嬉しいです(*´▽`*)すすす素敵な作品だなんて恐縮です。(照
今後も殺りんラブで書いていきますので、お暇な時に覗いて頂けたら嬉しいですv

それでは、コメントありがとうございました!
  • りこ さん |
  • 2010/06/01 (21:11) |
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  • 返信
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